ライブスター証券に懸ける
毎朝、新間をひろげると、世界経済についてのニュースがたくさん書いてある。
夜のテレビでも、海外の株式相場や外国為替相場の動きがかならず紹介されている。
それらは知らなくてはいけないことのように思うが、一週間や一カ月は知らなくても別に生活に不便はない。
そこで、新間やテレビが書きたてるのは、ほんとうに重大だから書いているのか、それとも、たんに習慣だから書いているのかと不思議になる。
解説する人も常連が決まっていて、その人たちはいつも、重大事件が起こったと言う。
ほんとうだろうか。
答えは多分、両方である。
ときどきは重大事件がある。
しかしほとんどは、そのときどきの流行に乗った事件を取り上げ、それに繰り返し的な解説をつけたものである。
私もかつてしばらくテレビニュースのコメンテ−ターをやっていたことがある。
やってみてわかったことは、一つの事件について話す時間は、十秒から二十秒しかないということで、よほどの重大事件のときでも最大が四十秒である。
これでは通説とちがうことは言いにくい。
通説はどこがちがっているかを説明している時間がないのが困る。
それから私がなぜこのようなコメントをするかについての理由を言う時間もないから、たんに結論だけを言わねばならない。
そのうえ、「暮らしへの影響はどうですか」「今後の見通しはどうですか。
それについても一言」と注文が多い。
しかも締めくくりには何かカッコをつけなくてはいけなるほど、これではテレビニュースがどれを見ても紋切り型で表面的で道徳的で希望観測的で、重大性強調型になるはずだとわかった。
毎朝毎朝重大事件発生では、視聴者はいずれくたびれてテレビを見なくなるだろう。
そう思ったので、私を責任者にした三十分番組をつくりたいと言われたときは、「今週は重大ニュースはありません。
安心して朝寝にもどりなさい」と、ときどき発言してもよいのなら引き受けると答えたら、ダメと言われてしまった。
およそ半世紀にもわたって繰り広げられた東西冷戦は、二十世紀も余すところ十年というときに終わりをつげた。
軍備拡張競争に回していた分をこんどは経済のために使えるというので、世界経済は新たな成長の時代を迎えるのではないかと思われたが、いまや先進諸国を中心に世界経済は深刻な同時不況に陥っている。
世界経済全体の成長率は、一九八九年の三・一%をピークにそのあとは年を追うごとに低下していき、九一年にはマイナス0・六%というさんざんな結果になってしまった。
この低迷をもたらした原因は、やはり規模の大きい米国、日本、ドイツといったところの不振である。
米国は財政赤字と貿易赤字という双子の赤字が大きな足かせとなって予想以上に長い停滞に悩んでおり、日本はバブル経済の崩壊をきっかげに奈落へとまっしぐらに落ちていった。
ドイツはドイツで、東西統一のコストが予想以上に大きかったことから高い失業率とインフレに頭を痛めるようになり、牽引役を失ったEC経済も総じて停滞するはめになった。
九三年の世界経済の実質成長率は二・二%程度とみられており、いくぶん回復の兆しをみせ始めたが、これは中国やアジアNIES(新奥工業経済地域)などの非先進諸国のめざましい経済成長による影響とみた方が正しいだろう。
とくに、天安門事件を境に成長の鈍化が予測された中国経済が、ふたたび二桁成長を二年連続していることが大きい。
世界銀行(世銀)の予測によると、発展途上国百六十二カ国のニOOO年までの実質成長率は五%近くで推移するものとされている。
世界同時不況からなかなか脱出できないために、うまみが少なくなっている世界貿易も敏感に反応し始めた。
先進各国を中心に、自国の貿易利益を確保する目的から、より安心できる地域主義的な「経済ブロック化」に走る傾向がみられる。
EC、NAFTA、AFTA、EAECなどがそれだ。
NAFTA(北米自由貿易協定)は、米国、カナダ、メキシコの北米大陸三カ国が自由貿易を通じて互いの経済発展を促進しあうことをめざしたものである。
しかし、それは名ばかりで、域外に対しては保護主義的な面が否めずFECや日本の経済進出に対する防御網だとの陰口もある。
また、こうした欧米先進国の動きに対して、アジア諸国としては危機感を覚えずにいられないことから、AFTA(ASEAN自由貿易地域)やEAEC(東アジア経済会議)といった構想でこれに対抗しようとしている。
こうしたブロック化が世界経済に吉と出るか凶と出るかはどちらともいえず、まさに諸刃の剣といえる。
このような状況にあって世界経済は、米国経済が本格的な回復過程に入れば、発展途上国による押し上げ効果もあって、九四年は三・四%程度にまで盛り返す可能性がある。
なお、中国、東欧など二十億人近い人口が市場経済に組み込まれたが、賃金水準は十分の一から百分の一なので、先進国全体の物価下落と製造業の空洞化が始まっている。
一ドル一OO円という円レートは、文字どおり、一ドル紙幣が百円玉と同じ価値をもつことである。
米国で一ドル紙幣を払えば、スタンドでドーナツと温かいコーヒーにありつけるが、日本でそれを買えば、どんなに安くても三百円はするだろう。
つまり、身のまわりの食料品でみるかぎり、一ドルはいまだに三OO円に相当する。
しかしその一方で、日本で十万円のテレビ(日本製)は、米国で一千ドルくらい、日本車は二万ドル程度はする。
一九八0年代、日本車が世界市場を席捲し始めたころの為替レートはまだ一ドル一五0〜ニOO円といったところだった。
日本で二百万円の乗用車が米国では一万〜一万三千ドルで買えたのである。
しかし、九三年から九四年にかけて、円の為替レートはどんどん上がりつづけ、とうとう一一O円の壁を突破して、目下一OO円と一一O円のあいだで動いている。
外車や高級ブランド品もしだいにわたしたち庶民にも手が届くようになった。
こうした円高は結果として、輸入物価の下落を通じて石油、電力、ガスといった輸入に頼る業種を潤し、圏内物価の安定にも少なからず寄与することになったが、輸出型産業には大きな打撃を与えて深刻な円高不況をもたらした。
日本の輸出産業の国際競争力の限界は一ドル一五円前後ともいわれており、一ドル一OO円という円高では、製造業は賃金コストを吸収しきれず、生産拠点の海外への移転を推進せざるをえなくなる。
とりわけ、近隣のアジア諸国に対しては、インフラ整備をはじめ製造業、金融・保険などの分野で日本企業の直接投資の伸びが著しく、その分だけ日本国内産業の空調化が懸念されている。
ニクソン・ショックを契機に世界の主要通貨が変動為替相場制に移行して以来、円はほぼ一貫して円高基調でここまできた。
その背景としては、他の先進国と比べてかなり高めの経済成長をつづけてきたこと、圏内のインフレ圧力が低かったこと、八五年のプラザ合意以降、協調介入がドル高是正の方向で進められてきたことなどが考えられる。
しかし最大の原因は、なんといっても貿易収支の大幅黒字がいっこうに減らないことにある。
輸出超過からくる円に対する需要増加の勢いは収まる気配がなく、いわゆる「Jカ−ブ効果」の後半部分が実現する可能性もみえないのである。
また、円高は裏を返せば他の通貨が円に対して安いということである。
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